『恋文教室』の中の話です。タイトル通り、ほとんど会話がありません…
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『無言通信』
彼女の香りで肺を満たした後、エッジは立ち上がってリディアをもう一度抱きしめ、彼女の背後にあるベッドに身を放り出した。濡れた髪の毛を留めていた簪が取れて、彼女の長い髪がほどけると同時に、甘い香りが強く漂った。
−−−愛しいひと。
心の中で呼んだのが伝わったかのように、リディアが顔をほころばせた。とても手紙に表現できないような感情が、全身を支配した。
最初は軽く、唇を重ねた。触れるか触れないか、という唇の逢瀬の後、少し強く唇を押し当てた。唇を軽く噛んで、優しく吸って、その後舌を彼女の口の中へ進めて絡めた。ゆっくりと彼女の舌が動きに応じる。まるで急く気持ちを抑えろと言わんばかりだ。
そうだ、急ぐことはない。彼女は自分の伴侶になることを決心してくれたのだから。どちらかが死ぬまで共にいるのだ。
それでも、彼女を抱くときは心のどこかに焦りがあった。まだ今の状況が夢ではないかと思ってしまう。そのくらい長く待ちわびた時間だった。
リディアの手が後頭部を上下する。短い髪が彼女の指に絡まり、離れる。唇を重ねたまま、エッジはリディアの夜着のボタンを片手で外した。やがてあらわになった白い肌に吸い寄せられるように、首から鎖骨にかけて舌を滑らせた。
鎖骨を強く吸うと、リディアが身を小さくよじった。自分でつけた赤い跡を見て、エッジは密かに苦笑した。こんなことをしなくても、彼女が他の男と何かあるなんてことはないだろうに。
「んっ…」
そのまま胸の頂点に唇を寄せると、リディアの少し開いた唇から甘い声が漏れた。何度か舌で弄んだあと、唇で薄紅色のその部分を吸い上げる。もう片方の胸は手で覆い、人差し指でやはり頂点を弄んだ。やがてどちらも固く持ち上がった部分を、引き続き舌と指で交互に攻める。
リディアがエッジの胸のあたりに両手を伸ばした。細い手は前で合わせた着物の隙間に入り込み、やがて背中に回った。動きづらい。エッジは上着を肩から外し、腰紐にぶら下げた。その姿でリディアを抱きしめると、彼女の胸の鼓動と柔らかさが地肌を伝わってきた。
「肌が触れ合うと、なんだか安心する…」
うっとりしたようにリディアが背中を抱く力を強める。言葉を返す代わりに唇を重ね、彼女の夜着を剥いだ。背中に触れるとうっすら汗をかいていた。水滴を指ですくうようにゆっくり撫でた。
手を背中から腰、臀部へ移動させる。尻を手で包む。
「きゃっ」
予想していなかったのか、リディアが短い悲鳴を上げたがエッジは笑みを浮かべて無視した。柔らかさが心地よい。しばらく堪能したあと、エッジは手を前に回して彼女の足の付け根に指を差し入れた。
「はぁんっ…」
その部分にはすでにとろりとした蜜の感触があった。その中の芽を密の潤いとともに指で擦るとリディアがびくりと身体を跳ねさせた。
リディアの手が熱を持ったエッジの中心に添えられる。相変わらず遠慮がちな動きだが、最近はリディア自からその部分に触れてくれるようになったことが嬉しい。それ自体、大きな進歩なのだが、一度手に入ってしまうとさらに欲してしまうのだった。エッジは腰紐を解いて脚衣を落とした。遮るものがなくなった部分にリディアの手を重ねる。彼女は細い手指で包み込み、ゆっくりと上下させた。彼女が触れているという事実だけで呼吸が荒くなりそうだった。
「あんっ、あぁんっ」
リディアの秘所は濡れそぼって、芽が大きく膨れていた。指を動かすたびに甘い声が上がり、身体が反って波打つ。芽を触りながら指を一本入れると、熱いその中がぎゅっと締まった。
「うう…んっ」
自分の中心を愛撫していたリディアの手が離れる。ふと表情を確認すると、快感のせいか余裕がなさそうで、肩で息をしている。潤んだ瞳が自分を捉えたので、エッジは表情を和らげて口づけを落とした。そして、屹立した熱の固まりをゆっくりと彼女の中へ進ませた。
「んぅっ」
リディアは声を抑えるかのように唇を噛んで、瞳をぎゅっと閉じた。エッジは彼女の下唇を親指でなぞった。ゆっくりと瞳を開けた彼女は、エッジの背中に手を回した。
「はぁぁんっ、…あんっ、あぁんっ!」
リディアの身体の中を前後すると、顔をのけぞらせた彼女の白い首と自分が先ほどつけた赤い跡が目に入った。くだらない方法だったが、欲望をかき立てるのには一役買った。彼女のこんな姿を見られるのは自分だけなのだと思うと、心が満たされた。
リディア、お前はオレのものだ−−−彼女が悶える姿を見下ろしていると、そんな子供じみた言葉が脳裏に浮かんだ。実際に言ったら、リディアは嫌がるかもしれない。でも今日はそう思ってもいいだろう?エッジは心の中で言い訳をした。お前が他の奴に取られるかもしれないと思って、オレは使い物にならなくなったんだ。お前がいない生活なんて、もうありえなくなっちまった。
「ああっ、ちょっ、エッジ!」
子供がいやいやをするように、リディアが首を左右に振っている。いつもと違う様子に、エッジは腰の動きを止めた。
「…つらかったか?」
リディアはまた首を振った。すうっと深く息を吸い込んで呼吸を整え、リディアは涙がうっすら浮かんだ瞳でエッジを見つめた。
「違うの。エッジ、何か考え込んでない…?」
問われてエッジは答えにつまった。身体を離して、しばらくどう言葉にするか思案した。なぜわかったのだろう。その疑問は顔に表れていたようだ。
「だって、なんだか思い詰めた顔をして、さっきから全然話してくれないから」
「え…そうだった?」
リディアはこくりと首を動かした。エッジは詫びる代わりに彼女の髪の毛を何度か梳いた。
リディアが身を起こして、じっと自分を心配するような視線を向けている。長い息を吐き出して、その勢いで言葉を発した。
「…まだお前と一緒にいることが信じられないことがあるんだよ。お前がどこか別の場所や、知らない誰かのところに行っちまうんじゃないかって不安になる。くだらないけど、お前がもうどこにも行かないって思いたい」
ため息混じりに告白する。それはつまり、彼女を信じていないということになりはしないか。失望の言葉に身構えると、リディアは悲しそうに微笑んで、優しく自分の腕を撫でた。
「それ、私のせいかも。私が自分の気持ちに気がつくのに時間がかかって、さらにきちんとエッジに伝えてないから」
そうじゃない、と否定する前に、リディアが両手でエッジの頬を支え、唇をふさいだ。柔らかなキスの後、リディアは首に腕を回して、耳元で囁いた。
「エッジ、好きだよ。一緒にいてくれてありがとう」
その言葉はすうっと心に染み込んで、全身に行き渡った。言われてみると確かに、これまで彼女の気持ちをはっきりと聞いたことがなかった気がする。それがわだかまりとなって、心に栓をしていた。自分の中だけを感情が空転する感じは、小動物が回し車の中を進み続ける様子に似ていた。リディアは何かに気づいたように顔を輝かせ、いたずらっぽく笑った。
「あ、ここで愛しいお館様、って言えばよかったね」
たまらず、エッジは強くリディアを抱きしめた。
「…悪い、言葉が見当たらねえ」
せっかく彼女が解き放ってくれた自分の感情は、どこまでも広い空間のようで、何から伝えるべきか見当もつかなかった。どんな言葉もこの気持ちを伝えきれまい、とも思った。
「もういいよ。言葉じゃなくても」
耳元に伝わる空気で、リディアが微笑んだのがわかった。彼女の優しさに何度自分は救われているだろうか。その気持ちだけは伝えておくべきだと思った。
「ありがとな」
「こちらこそ」
今度はふたりで顔を見合わせて笑った。自分の顔は泣き笑いのような顔だったかもしれない。どちらからともなく唇が重なった。
「…はあっ」
唇が離れた瞬間、リディアが息継ぎとも喘ぎともとれる息を吐き出した。絡まる舌の性急な動きは、焦りから来るものではなかった。ただ彼女の甘さを味わいたかった。
抱き合って、肩に指を触れると、皮膚のすぐ下に骨の感触がある。軌跡を残すかのように、背中に手を滑らせる。彼女もまったく同じように、エッジの肩から背中にかけて、ゆっくり何度も手を上下させた。自分ではそう触れられない部分を優しく撫でられると、胸の辺りが温まって、頭がぼうっとした。
「ああ、確かに、安心するっていうのもわかる」
「ね、そうでしょ」
リディアは嬉しそうに頬と耳の間に唇を寄せた。彼女の言い分を認めながらも、エッジは苦笑した。
「うーん、でも、やっぱり我慢できなくなるな」
純粋に触れ合うことを楽しんでいる彼女には申し訳ないような気がしたが、抱きしめたまま身体を倒した。再度、彼女の足の付け根に指を差し挟むと、先ほどよりも潤っていた。
「はぁんっ」
大きく膨らんだ芽をこする。指を軽く触れているだけにも関わらず、彼女の息づかいはどんどん荒くなっていく。その部分に口づけたい気もしたが、自分が我慢の限界に達していた。
彼女の足をつかんで大きく開くと、エッジは再度リディアの中に自分の中心を侵入させた。これ以上ないくらいに膨張しているものは、温かく濡れそぼったリディアに包み込まれた。
「あっ、…あぁんっ!」
はやる気持ちを抑えて、ゆっくりと身体を前後させ、最も深い部分まで貫く。リディアの中から溢れる蜜が、くちゅくちゅと水音を立てて、結合を歓迎しているようだった。
「どう、だ…?」
「気持ち、い、いっ、ぁんっ」
初めて聞くその感想が自分を追いつめ、自然と腰の動きが速くなった。
「あぁんっ!はぁっ、んぅっ!」
彼女の声が漏れるたびに締めつけが強くなり、こちらも意識が飛びそうになる。
ふたり分の荒い呼吸が部屋を支配する。リディアの腕が一層強く、エッジの背中を抱いた。
「あぁん、エッジ、も、だめ!」
「ん、オレも…」
「あ、あ、あ、あぁぁぁんっ!!」
リディアの身体が痙攣したかのようにびくびくと震えた。それと同時に強くくわえ込まれたエッジの熱の塊が、欲望を一気に放流させた。
肌寒い。少し悩んでから瞳を開けると、窓の外がうっすらと白んでいることに気づいた。明け方の涼しさからして、秋はもうすぐのようだ。
服も着ずに朝まで眠ってしまったのは、いつぶりだろうか。朝風呂にするか、二度寝にするか、悩んでいると、隣のリディアが腕を巻きつけてきた。温かい。
「…もう、朝?」
「まだかなり早い」
彼女を抱き寄せると、鎖骨の上の赤い跡が目に入った。明るい場所で見ると、彼女の白い肌の上でより目立つ。忸怩たる思いとはこのことだ。エッジはため息をついて、その跡の上に指を乗せた。
「ごめんな」
彼女は億劫そうに寝ぼけ眼を下に向けたが、自分の鎖骨を見るのは難しいのか、首をかしげた。
「…なにが?」
「いや、ちょっと跡がついてる」
「ふうん…」
興味なさそうに、リディアは自分の腕を抱きしめたまま瞳を閉じた。
とりあえず朝風呂案は却下するしかなさそうだ。身体の半分に温かさを感じながら、エッジはもう一度眠りの世界へ旅立つことにした。
end
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彼女の香りで肺を満たした後、エッジは立ち上がってリディアをもう一度抱きしめ、彼女の背後にあるベッドに身を放り出した。濡れた髪の毛を留めていた簪が取れて、彼女の長い髪がほどけると同時に、甘い香りが強く漂った。
−−−愛しいひと。
心の中で呼んだのが伝わったかのように、リディアが顔をほころばせた。とても手紙に表現できないような感情が、全身を支配した。
最初は軽く、唇を重ねた。触れるか触れないか、という唇の逢瀬の後、少し強く唇を押し当てた。唇を軽く噛んで、優しく吸って、その後舌を彼女の口の中へ進めて絡めた。ゆっくりと彼女の舌が動きに応じる。まるで急く気持ちを抑えろと言わんばかりだ。
そうだ、急ぐことはない。彼女は自分の伴侶になることを決心してくれたのだから。どちらかが死ぬまで共にいるのだ。
それでも、彼女を抱くときは心のどこかに焦りがあった。まだ今の状況が夢ではないかと思ってしまう。そのくらい長く待ちわびた時間だった。
リディアの手が後頭部を上下する。短い髪が彼女の指に絡まり、離れる。唇を重ねたまま、エッジはリディアの夜着のボタンを片手で外した。やがてあらわになった白い肌に吸い寄せられるように、首から鎖骨にかけて舌を滑らせた。
鎖骨を強く吸うと、リディアが身を小さくよじった。自分でつけた赤い跡を見て、エッジは密かに苦笑した。こんなことをしなくても、彼女が他の男と何かあるなんてことはないだろうに。
「んっ…」
そのまま胸の頂点に唇を寄せると、リディアの少し開いた唇から甘い声が漏れた。何度か舌で弄んだあと、唇で薄紅色のその部分を吸い上げる。もう片方の胸は手で覆い、人差し指でやはり頂点を弄んだ。やがてどちらも固く持ち上がった部分を、引き続き舌と指で交互に攻める。
リディアがエッジの胸のあたりに両手を伸ばした。細い手は前で合わせた着物の隙間に入り込み、やがて背中に回った。動きづらい。エッジは上着を肩から外し、腰紐にぶら下げた。その姿でリディアを抱きしめると、彼女の胸の鼓動と柔らかさが地肌を伝わってきた。
「肌が触れ合うと、なんだか安心する…」
うっとりしたようにリディアが背中を抱く力を強める。言葉を返す代わりに唇を重ね、彼女の夜着を剥いだ。背中に触れるとうっすら汗をかいていた。水滴を指ですくうようにゆっくり撫でた。
手を背中から腰、臀部へ移動させる。尻を手で包む。
「きゃっ」
予想していなかったのか、リディアが短い悲鳴を上げたがエッジは笑みを浮かべて無視した。柔らかさが心地よい。しばらく堪能したあと、エッジは手を前に回して彼女の足の付け根に指を差し入れた。
「はぁんっ…」
その部分にはすでにとろりとした蜜の感触があった。その中の芽を密の潤いとともに指で擦るとリディアがびくりと身体を跳ねさせた。
リディアの手が熱を持ったエッジの中心に添えられる。相変わらず遠慮がちな動きだが、最近はリディア自からその部分に触れてくれるようになったことが嬉しい。それ自体、大きな進歩なのだが、一度手に入ってしまうとさらに欲してしまうのだった。エッジは腰紐を解いて脚衣を落とした。遮るものがなくなった部分にリディアの手を重ねる。彼女は細い手指で包み込み、ゆっくりと上下させた。彼女が触れているという事実だけで呼吸が荒くなりそうだった。
「あんっ、あぁんっ」
リディアの秘所は濡れそぼって、芽が大きく膨れていた。指を動かすたびに甘い声が上がり、身体が反って波打つ。芽を触りながら指を一本入れると、熱いその中がぎゅっと締まった。
「うう…んっ」
自分の中心を愛撫していたリディアの手が離れる。ふと表情を確認すると、快感のせいか余裕がなさそうで、肩で息をしている。潤んだ瞳が自分を捉えたので、エッジは表情を和らげて口づけを落とした。そして、屹立した熱の固まりをゆっくりと彼女の中へ進ませた。
「んぅっ」
リディアは声を抑えるかのように唇を噛んで、瞳をぎゅっと閉じた。エッジは彼女の下唇を親指でなぞった。ゆっくりと瞳を開けた彼女は、エッジの背中に手を回した。
「はぁぁんっ、…あんっ、あぁんっ!」
リディアの身体の中を前後すると、顔をのけぞらせた彼女の白い首と自分が先ほどつけた赤い跡が目に入った。くだらない方法だったが、欲望をかき立てるのには一役買った。彼女のこんな姿を見られるのは自分だけなのだと思うと、心が満たされた。
リディア、お前はオレのものだ−−−彼女が悶える姿を見下ろしていると、そんな子供じみた言葉が脳裏に浮かんだ。実際に言ったら、リディアは嫌がるかもしれない。でも今日はそう思ってもいいだろう?エッジは心の中で言い訳をした。お前が他の奴に取られるかもしれないと思って、オレは使い物にならなくなったんだ。お前がいない生活なんて、もうありえなくなっちまった。
「ああっ、ちょっ、エッジ!」
子供がいやいやをするように、リディアが首を左右に振っている。いつもと違う様子に、エッジは腰の動きを止めた。
「…つらかったか?」
リディアはまた首を振った。すうっと深く息を吸い込んで呼吸を整え、リディアは涙がうっすら浮かんだ瞳でエッジを見つめた。
「違うの。エッジ、何か考え込んでない…?」
問われてエッジは答えにつまった。身体を離して、しばらくどう言葉にするか思案した。なぜわかったのだろう。その疑問は顔に表れていたようだ。
「だって、なんだか思い詰めた顔をして、さっきから全然話してくれないから」
「え…そうだった?」
リディアはこくりと首を動かした。エッジは詫びる代わりに彼女の髪の毛を何度か梳いた。
リディアが身を起こして、じっと自分を心配するような視線を向けている。長い息を吐き出して、その勢いで言葉を発した。
「…まだお前と一緒にいることが信じられないことがあるんだよ。お前がどこか別の場所や、知らない誰かのところに行っちまうんじゃないかって不安になる。くだらないけど、お前がもうどこにも行かないって思いたい」
ため息混じりに告白する。それはつまり、彼女を信じていないということになりはしないか。失望の言葉に身構えると、リディアは悲しそうに微笑んで、優しく自分の腕を撫でた。
「それ、私のせいかも。私が自分の気持ちに気がつくのに時間がかかって、さらにきちんとエッジに伝えてないから」
そうじゃない、と否定する前に、リディアが両手でエッジの頬を支え、唇をふさいだ。柔らかなキスの後、リディアは首に腕を回して、耳元で囁いた。
「エッジ、好きだよ。一緒にいてくれてありがとう」
その言葉はすうっと心に染み込んで、全身に行き渡った。言われてみると確かに、これまで彼女の気持ちをはっきりと聞いたことがなかった気がする。それがわだかまりとなって、心に栓をしていた。自分の中だけを感情が空転する感じは、小動物が回し車の中を進み続ける様子に似ていた。リディアは何かに気づいたように顔を輝かせ、いたずらっぽく笑った。
「あ、ここで愛しいお館様、って言えばよかったね」
たまらず、エッジは強くリディアを抱きしめた。
「…悪い、言葉が見当たらねえ」
せっかく彼女が解き放ってくれた自分の感情は、どこまでも広い空間のようで、何から伝えるべきか見当もつかなかった。どんな言葉もこの気持ちを伝えきれまい、とも思った。
「もういいよ。言葉じゃなくても」
耳元に伝わる空気で、リディアが微笑んだのがわかった。彼女の優しさに何度自分は救われているだろうか。その気持ちだけは伝えておくべきだと思った。
「ありがとな」
「こちらこそ」
今度はふたりで顔を見合わせて笑った。自分の顔は泣き笑いのような顔だったかもしれない。どちらからともなく唇が重なった。
「…はあっ」
唇が離れた瞬間、リディアが息継ぎとも喘ぎともとれる息を吐き出した。絡まる舌の性急な動きは、焦りから来るものではなかった。ただ彼女の甘さを味わいたかった。
抱き合って、肩に指を触れると、皮膚のすぐ下に骨の感触がある。軌跡を残すかのように、背中に手を滑らせる。彼女もまったく同じように、エッジの肩から背中にかけて、ゆっくり何度も手を上下させた。自分ではそう触れられない部分を優しく撫でられると、胸の辺りが温まって、頭がぼうっとした。
「ああ、確かに、安心するっていうのもわかる」
「ね、そうでしょ」
リディアは嬉しそうに頬と耳の間に唇を寄せた。彼女の言い分を認めながらも、エッジは苦笑した。
「うーん、でも、やっぱり我慢できなくなるな」
純粋に触れ合うことを楽しんでいる彼女には申し訳ないような気がしたが、抱きしめたまま身体を倒した。再度、彼女の足の付け根に指を差し挟むと、先ほどよりも潤っていた。
「はぁんっ」
大きく膨らんだ芽をこする。指を軽く触れているだけにも関わらず、彼女の息づかいはどんどん荒くなっていく。その部分に口づけたい気もしたが、自分が我慢の限界に達していた。
彼女の足をつかんで大きく開くと、エッジは再度リディアの中に自分の中心を侵入させた。これ以上ないくらいに膨張しているものは、温かく濡れそぼったリディアに包み込まれた。
「あっ、…あぁんっ!」
はやる気持ちを抑えて、ゆっくりと身体を前後させ、最も深い部分まで貫く。リディアの中から溢れる蜜が、くちゅくちゅと水音を立てて、結合を歓迎しているようだった。
「どう、だ…?」
「気持ち、い、いっ、ぁんっ」
初めて聞くその感想が自分を追いつめ、自然と腰の動きが速くなった。
「あぁんっ!はぁっ、んぅっ!」
彼女の声が漏れるたびに締めつけが強くなり、こちらも意識が飛びそうになる。
ふたり分の荒い呼吸が部屋を支配する。リディアの腕が一層強く、エッジの背中を抱いた。
「あぁん、エッジ、も、だめ!」
「ん、オレも…」
「あ、あ、あ、あぁぁぁんっ!!」
リディアの身体が痙攣したかのようにびくびくと震えた。それと同時に強くくわえ込まれたエッジの熱の塊が、欲望を一気に放流させた。
肌寒い。少し悩んでから瞳を開けると、窓の外がうっすらと白んでいることに気づいた。明け方の涼しさからして、秋はもうすぐのようだ。
服も着ずに朝まで眠ってしまったのは、いつぶりだろうか。朝風呂にするか、二度寝にするか、悩んでいると、隣のリディアが腕を巻きつけてきた。温かい。
「…もう、朝?」
「まだかなり早い」
彼女を抱き寄せると、鎖骨の上の赤い跡が目に入った。明るい場所で見ると、彼女の白い肌の上でより目立つ。忸怩たる思いとはこのことだ。エッジはため息をついて、その跡の上に指を乗せた。
「ごめんな」
彼女は億劫そうに寝ぼけ眼を下に向けたが、自分の鎖骨を見るのは難しいのか、首をかしげた。
「…なにが?」
「いや、ちょっと跡がついてる」
「ふうん…」
興味なさそうに、リディアは自分の腕を抱きしめたまま瞳を閉じた。
とりあえず朝風呂案は却下するしかなさそうだ。身体の半分に温かさを感じながら、エッジはもう一度眠りの世界へ旅立つことにした。
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