2014年3月18日火曜日

SS: ライバルは君だ

エッジとリディアのエンディング後の日常風景にパロムとポロムを絡めて書いてみました。
FF4TAのポロム編から妄想してみました。わたしの書く話の中ではややラブい方です。われながらこのふたりはつきあってるの!?どうなの!?と思ってしまいますが、その辺はおいおい書きます!




『ライバルは君だ』


窓からの光は木々の色を透して降り注ぎ、部屋を淡い緑色に見せていた。
家の外がすぐ森だからだろう。不思議と心が落ち着く色合いであった。
エッジは、リディアが幻界より戻ってから、定期的にと言っていい間隔でミストの村へ通っていた。
復興中の村に必要そうな物資を携えて村に来たのち、村人と一緒になって土木作業をし、畑を耕す。
そして、仕事を終えた後に、リディアの家で彼女と食事をしたり、お茶を飲んだりするのが習慣となっていた。
淡い緑色の光の中を、ティーポットとカップを持ったリディアが歩いている姿は、エッジをお伽話の世界に迷い込んだような錯覚に陥らせた。
森に住む可憐な妖精とのお茶の時間だ。そう思って眺めていると、余程呆けた顔をしていたのか、リディアが首を傾げた。
「どうしたの?」
彼女の声で我に返り、慌てて首を振る。
「なんでもねえよ」
「疲れてるんでしょ?」
間髪置かずに放たれたリディアの言葉は断定的だった。エッジの否定の言葉を信じていないのだろう。
少し困ったような顔をしたリディアは、茶器をテーブルに置いて、椅子に座るエッジの顔を見下ろすように目を伏せる。
「自分の国のお仕事だって大変なのに、ミストのことまで気にかけてくれて・・・・本当に無理しなくていいんだからね」
そこまで言って途切れた彼女の言葉に、どう答えるべきか少し悩み、エッジは頬を掻いた。
疲れていないと言ったら嘘になる。
世界が平和になり、世界中の元首という元首は皆知った顔ではあるのだが、今まで鎖国状態だったエブラーナと各国の交易は思いの外決めることが多く、身体がいくつあっても足りない、と思うほどであった。
更に崩壊した城の再建や、先の戦いで住む家や家族を失った人々の援助、バブイルの塔を監視するための軍隊の整備など、やらなければいけないことは山積している。
そんな状況にあっても、彼女の故郷を復興させることは、自分にとって大きな喜びなのだ。
エブラーナに彼女を呼ぶことができないのであれば、せめて安息の地を与えたい。
しかし、同様に再建しなければならない自分の国のことを思うと、国を挙げての公の支援は憚れる。
だから、国王としてではなく、一個人として寝る時間も惜しんでこの村の復興に関わってきたのだ。
「無理なんかしてねえから、気にすんなよ。オレもこの村が好きで来るんだから」
逡巡した結果、自分の口から出てきた言葉は何の飾り気もないものであったが、リディアは少し安心したかのように笑顔を浮かべた。
「あ!そうだ。ローザからもらったおいしいお菓子があるの」
身を翻して再び台所へ行こうとした瞬間、足をもつれさせたのか、リディアがその場で躓いた。
慌てて椅子から立ち上がり、腰に手を回してそれを支える。その身体は驚くほど軽い。
「あ、ありがと」
リディアは少し恥ずかしそうに、エッジの顔を見て苦笑いを浮かべてお礼を言う。
エッジはそんなリディアを後ろから抱きしめる。
珍しく、リディアが拒絶しない。
腕の中に納まる彼女の感触は、以前と比べて柔らかさより硬さが増したように感じた。
「なあ、お前痩せたんじゃねえ?」
漏らすように言うと、リディアはごまかすかのように笑顔を浮かべた。
「そ、そうかなあ?」
言い当てられたときにとぼけるのは彼女の常套手段だった。エッジは溜息を吐き出した。
「お前こそ無理すんなよ」
リディアの身体を自分の方に向けて、その大きな瞳を見つめる。
少し潤んだ紺碧の瞳が、いつもより大きく感じられるのも、彼女が痩せたからだろうか。
「ひとりで頑張りすぎんなよ。オレはいつだって来てやるから」
リディアがこくりと頷いて、細い腕を背中に回してくる。
新緑と花の香りが混ざった香りが鼻腔を刺激し、同時に自分の身体の隅々まで染み渡る。
この香りを感じられるのは、エッジにとってこの上ない幸福な時間だった。
紺碧の瞳から放たれる視線は相変わらず自分の視線と絡み合っている。
エッジは片手を彼女の腰に据えたまま、もう片方の手で彼女の頬に触れた。
すべすべとした肌の感触をしばらく味わったあと、親指で彼女の小さな唇の形を確かめるようになぞる。
いつも大きな口を開けて笑っているとは思えないくらい小さくて薄い唇から、少しずつ力が抜けていくのを感じた。
桃色の花のようなその唇がすっかり柔らかくなった頃、リディアが頬を赤らめて瞳を閉じた。

「リディアねえちゃーん!!!」

自分の唇が桃色の花に到達する寸前、明るく大きな声がそれを阻んだ。
いつもこうだ!エッジは叫びたくなる気持ちを抑えて、リディアから手を離す。
離されたリディアは真っ赤な顔をして俯いた。
その様子も愛らしいのに!!エッジは憎憎しげに声がした方を睨んだ。
「パロム!ちゃんとご挨拶してから入らなきゃダメでしょ!!」
ばたばたと大きな足音を立てて家に入ってきたのは、双子の魔道士、パロムとポロムである。
パロムはリディアに駆け寄り、飛び跳ねて彼女の首に腕を回して抱きつく。
「パロム!久し振りね」
リディアは少し驚いたようだったが、すぐに笑顔になり、身を屈めて彼をぎゅっと抱きしめ返す。
後から入ってきたポロムが、申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんなさい。リディアさん。突然お邪魔してしまって。こんにちは」
リディアが挨拶を返すと、ポロムはエッジの方に身体を向けて笑顔を浮かべ、その小さな頭をぺこりと下げた。
「エッジさんもいらしてたんですね。こんにちは」
ポロムの挨拶に答えた瞬間、エッジの顔が引きつった。
リディアの腕の中のパロムが、先程リディアに抱きついたときの無邪気な笑顔と同一人物ものとは思えない、底意地の悪い笑みをエッジに向けていたのだ。
物言いたげなその表情に年甲斐もなく憤りを覚える。
エッジはつかつかとパロムに歩み寄り、そのおさげを引っ張った。パロムが必要以上に大きな声で悲鳴を上げる。
「おい!離れろ!クソガキ!!」
「痛いよー!リディアねえちゃん!」
パロムの悲鳴にリディアが眉を吊り上げる
「エッジ!何するのよ!」
釈然としないが、リディアに怒られたら、従うしかない。
しぶしぶおさげを離すと、エッジの暴行に抗議しながらパロムは再びリディアに抱きついた。
リディアはパロムの訴えにいちいち頷きながら、かわいそうにと彼の頭を撫でる。
怒りを抑えようと、深呼吸をすると、舌を出しているパロムと目が合った。
エッジは再びパロムのおさげを掴み、リディアをこの子供の顔をした悪魔から解放する。
「もう!エッジ!子供をいじめちゃだめでしょ!」
再びリディアが非難の声を上げる。しかし、エッジはもう我慢ならない。
「普通の子供じゃねえんだよ、こいつは!!お前、よくも邪魔しておきながら!!!」
「うるせー!離せよ、バカ忍者!!」
「バカとはなんだ!!このエロガキ!!!!」

怒声や悲鳴が静かな村中に響いていた。




end


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大人になったパロムとエッジはこんなかんじです。
『真夜中の大人会談』

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